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博古堂 四代目当主 後藤圭子さん

鎌倉彫りの技術やデザインの力は
日常に生かすことができます

鎌倉時代、禅宗と共にさまざまな文物が中国から日本にもたらされました。その影響を受けて仏師がつくった仏具を原点とするのが、鎌倉彫。その老舗として知られるのが博古堂です。

本社兼店舗があるのは、鶴岡八幡宮の赤い鳥居からほんの五歩程度のところ。灰色の瓦に白壁の二階建て、古都といえども変わりゆく町並みのなかで、慎ましさを感じる姿が歴史を感じさせます。

じつは伊佐ホームズは平成十八年、昭和初期に建てられたこの建物の全面改修を担当しています。屋根などの外観はそのままに、耐震補強をすると同時に、店舗面積を広げました。

古い梁を生かすなど、伝統を引き継ぐように改修。2階は資料館で、先代たちの作品が展示されています。

そこに並ぶのは、牡丹や柘榴などの彫刻を施したお盆、お皿、重箱、硯箱、菓子皿、茶托など。立体感のあるフォルムと、深みのある色と光沢に品格が薫ります。
これらを取り仕切っているのが、現当主である後藤圭子さんです。
「刷毛目を生かしたり、上塗り後に粉を蒔きつけるなどといった博古堂のオリジナルの技術は、日常の器にも生かすことができます」と後藤さん。鎌倉彫りは、彫刻した木に漆を塗り重ねるものですが、植物の真菰の粉を蒔きつけて、乾いてから研ぎ出す「乾口塗り」、錫の粉を蒔く「錫蒔き」など、仕上げの方法も独特です。

手繰小箱・唐草。伝統的なぐり唐草を大胆にアレンジ。存在感に圧倒されます。

陰影が美しい茶托。

鍋の取り皿にも使えるお椀。

始まったばかりのブランド「hakko」は、鎌倉彫りをもっと気軽に使ってほしい、という目的で生まれたもの。お椀、銘々皿などはどれもフォルムが美しく、一部に彫刻が施されていたり、色が塗り分けられていたり。「漆の器は、手にとっても熱くないので、お鍋の取り皿にもいいんですよ」とアドバイス。なるほど、そんな使い方もあるのですね。

一部に彫刻を施したそば猪口。

取材に訪れた日は、ギャラリー櫟の展覧会に向けての打ち合わせも行われました。出展される新作のテーマは、後藤さんが以前からあたためていた「色」。通常の朱や黒や錫に加えて、紺、ブルーグレー、ベージュといった色を使ったり、内と外で塗り分ける、というものです。襲の色目のように、ちょっとしたふるまいによって、別の色が見える、といったことも意図しています。彫刻をモダンに取り入れたものも計画中です。
「漆の器は、使っているうちに、赤く鮮やかになっていったり、経年変化も魅力です」
それこそまさに、本物ということなのでしょう。

新作のための色見本。


博古堂
鎌倉市雪ノ下2-1-28
tel. 0467-22-2429
営業時間などは公式サイトをご確認ください。
http://www.kamakurabori.org/
施工事例「鎌倉彫店舗改装 鎌倉博古堂」

後藤圭子(ごとう・けいこ)

鎌倉時代より仏師の家系である後藤家の29代目として生まれる。1976年東京藝術大学工芸科卒業。鎌倉彫資料館学芸員を経て、1978年博古堂入社。2006年博古堂4代目当主に。

『伊佐通信』3号(2014年)より転載
※内容は掲載時のものです

「麗しの鎌倉彫 博古堂の色とかたち」を開催しました(2014年7月)

後藤圭子さんがデザインし、博古堂工房が製作した新ブランド「hakko」の器や調度品を展示販売しました。
期間中、和菓子家の金塚晴子さんによるオリジナルの和菓子を味わっていただく会も開催。和菓子と器の色の取り合わせをお楽しみいただきました。

麗しの鎌倉彫 博古堂の色とかたち