その折々に寄せた伊佐裕の言葉。
それは思いであり、決意であり、
メッセージでもあります。

一
家づくりを
通じて
暮れどきの山の稜線に
家の屋根が重なり一つのものとなる。
窓からの明かりが実に暖かく懐かしい。
「自然」と「家」と「人」
各々が釣り合うよう 仕事に励む
「一」になるものを目指す。
二
日本人の
感性

自然素材のみで仕上げられた和室である。
明障子越しの光が清々しい。
デザインと素材が伝統の上で結実し
規律性と包容力が表現できた。
自然を感じ日本人の感性に応じた生活をする
私はその為の仕事がしたい。

三
新年我社の志
方形の家外壁は不燃杉板である
天然材だけが持つ暖かみ
素材感を面的にデザインしたのである
自然の律動が感じられる家
我社の志は家族に相応しい
存在感のある家を創ること
本年もこの尊い仕事に邁進して参ります。
四
建築は
散文詩

冬木立に佇む平屋建の山荘
大屋根は鈍く光り、
辺りに静かに溶け込む
窓よりの灯りに暮らしの
温度を測る
建築は常に「意味」と「カタチ」の
融合への道のりのことだと思う
建築は、散文詩でありたい。

五
露地の効用
茶室の灯りが
露地にそこはかとなく広がり
この住人の暮らしを地面に照す
私達は はかなき「生」の中に
拠り処を求める
はかなき永遠
露地は建築物を包み、自然に還す
六
良い建物

平屋の切妻の屋根は低く、
母屋を包み
下屋の軒の水平が美しく
安定感を加えるこの家
良い建物には美しいフォルム、質量感
自然との調和がある
建築の仕事は無機物を有機物に転じ得るかである

七
不燃校倉
木の美しさ
水平に組まれた板壁の家
板材の厚みが各々陰影を生じ
デザインとなる。
自然が生み出す「カタチ」
「カタチ」は無為がいいのである。
木の生命を生かして家づくりをする。
八
玄関の
仕上げより

この玄関ホールの仕上げは
土間・鉄平石、床・オーク、壁・石灰岩
土間の低い部分より徐々に
素材感が粗いものから、繊細なものへ
心地良くデザインされた空間と天然素材の一体化。
建築は、「脳と心」を駆使する手仕事である。
駆使する手仕事である。

九
入り母屋
造りの家
住宅の美しさは「屋根」と「軒」の
形状で決まる。
これらは護るべきものの為の強い意志である。
そこには生命の旋律がある。
ここではバルコニーの格子が
「五線譜」かの如く
建物に調べを生み出している。
ほとんどは『芸術新潮』掲載の広告に初出。
一部は著書『和なるもの、家なるもの』(講談社)にまとめられています。