素材のたいせつさを実感。
「新築よりももっとよくなりました」
伊佐ホームズの代表取締役社長、伊佐裕の自邸です。
築32年を迎え、傷んでいた内装をやり直し、老朽化していた浴室とキッチンの設備を取り替えました。
日本で昔から使われてきた素材と技術をたいせつにしたいと、ヒノキの床、漆喰の壁、和紙の天井、国産の畳表などを厳選しています。
照明設備も一新。とくにリビングは蘇った白木や漆喰の清浄さをそのまま感じられるよう、照明は演色性のよいものを選択。そのときの気分や目的にあった色温度で過ごせるよう、電球色から昼光色まで自在に調色、調光できるようにしました。
「家の歴史はつながりつつつつ、更新した気持ちよさ。新築よりもっとよくなった感じもあります」と、伊佐。
住みながらの工事で、苦労もありましたが、滋味深い、時間を経ると共によさがますます引き立つ改装です。
この家が建てられたのは、伊佐ホームズが創業してから数年が経った頃。
設計は、ISA建築家集団メンバーのひとりだった建築家 柳瀬真澄さんです。
玄関から入って正面、中庭を介してお茶室があるのが特徴で、和とモダンが融合する、伊佐ホームズの理念を体現した家となりました。
この家で、5人の子どもが育ち、伊佐裕の妻、眞梨子さんによるお茶会が開かれ、数え切れないほどのお客様がもてなされてきたのです。
無垢の床の削り直し
もともと床は15ミリ厚の無垢のヒノキです。場所によっては、ウレタン樹脂塗装が剥がれてしまい、まだらになっていました。そこで表面をサンダーで削り、オイルを塗布。見違えるように美しく蘇り、硬すぎずやわらかすぎない足触りとなりました。
畳の取り替え
現在六代目となる老舗の畳店に依頼、茶室と寝室の畳を取り替えました。畳表(たたみおもて)は、熊本・八代の農家から直接仕入れているもの。残留農薬のチェックも行われていて安心です。建材畳床だと硬さがあるため、薄いクッションを入れて、足触りをよくしています。縁(へり)は亜麻色に一新しました。
襖の張り替え
茶室の茶道口の太鼓ふすま(縁のないふすまのこと)は、上貼り紙を手漉きの麻紙に張り替え。茶室の伝統的な手法にのっとり、金物を使わない「切り引手」を踏襲。清々しさが漂います。
漆喰の塗り直し
汚れが目立ってきていたリビングと廊下の漆喰も新しく。既存の壁の上に10㎜厚で塗り重ねました。伝統的な「おさえ」の手法です。折々の光を吸収し、おだやかな静謐感と清潔感が漂うのは、漆喰ならではです。
天井の張り替え
リビング
リビングの天井には、膠と顔料を混ぜて塗った煤灰色の和紙を使用。二三判(約60×90cm)を張りつなぎ、継ぎ目を味としています。
主寝室
主寝室の天井は、もとは竿縁天井だったのを絹シケに張り替えました。昔からふすまの高級上張りとして使われてきた絹シケは、糸そのものの不均一さを生かした織物で、静かな味わいがあります。照明は和風照明で知られる、京都の和田卯のもの。
下駄箱を取り替え
下駄箱とリビングの飾り台は、新たにデザインして工務店に特注。ナラを主材とし、下駄箱の棚板は汚れが落ちやすいようにポリ合板にするなど、使い勝手も考慮しました。
浴室と洗面室を全面改修
浴槽から暖房乾燥設備、内装、洗面カウンターまで、浴室と洗面室はまるごと一新。ホーローに替えた浴槽は、「熱が心地良くはじける感じがする」と伊佐。浴室と洗面室の間仕切りはガラス戸に替えて、ぐっと開放感が味わえるようになりました。
キッチンも交換
既存のシステムキッチンは撤去し、新たに設置。ダウンライトも新設しました。床は削り直し、クロスは張り直しです。リビングとの間の格子の戸は、もとのまま。
建築データ
【所在地】東京都世田谷区
【工事期間】令和4年3月〜5月
【構造】木造2階建て
【延床面積】159.91m² (48.37坪) ※そのうち1階部分 89.08m² (26.95坪)を改修
[令和5年1月撮影・取材]
1階図面