木造住宅では要となる構造材に、おもに埼玉県秩父の木材を使用しています。
伊佐ホームズでは、秩父の林業家、製材所、プレカット工場と連携し、木材の新しい流通とトレーサビリティのシステムをつくりあげました。
これは、高品質でグレードの高い木材を山側から直接購入し、適正な価格でお客さまに供給することにより、長期的な視点で森を守り、育てていくための仕組みです。家を建てることが森林再生につながるのです。
埼玉県西部の秩父地方は、都心から約100kmの林産地です。近世から、大消費地である江戸・東京に向けて木材を出荷してきました。しかし一時は輸入材に圧され、この地でも林業は衰退しつつありました。
そのなかにあっても木々は育ち続け、森林の再生に情熱を持ち続けている人々がいます。私たちは、そんな林業家・製材所・プレカット工場とともに、木材トレーサビリティのシステムを構築しました。
「トレーサビリティ」とは、製品の生産・流通の過程を追跡する仕組みのこと。住宅を構成する柱材や梁材の1本1本が、どんな森で誰が育てた木材か、誰が加工したのか、すべての履歴がわかるようにするものです。
具体的には、森林パートナーズ株式会社が持つ情報システムを活用し、伐採から加工、流通の各段階の情報をQRコードで管理し、クラウドサーバーで共有します(図1)。
まず、林業家の組合である「秩父樹液生産協同組合(以下組合)」が、立ち木を伐採。木の曲りや芯ずれなどの状態をチェックし、性質の良い丸太を選んで出荷します。伊佐ホームズで構造材として使うのは、独自の選木基準を満たした材のみです(表1)。組合では、これらの原木情報をQRコードに入力。それを記したシールを丸太の小口に貼って、製材所「金子製材」に届けます。
金子製材では丸太を製材して乾燥。その後、構造強度(ヤング係数)や材寸を計測します。これらの情報もQRコードに付加します。
プレカット工場「島崎木材」では、伊佐ホームズが作製した図面に沿って木材に継手仕口などの加工を施し、図面とQRコードをリンクさせます。そして仕上がった構造材を上棟現場に納品するのです。
「田園都市の家」で実際に使用した建築用材のA材の中でも、10の基準を満たした良材を「SPウッド」と名付けて確保。それを適正な価格で取引することで、山側にもこれまでより多い材価を支払うことが可能になった。
このシステムは4者それぞれにメリットがあります。
一般に、国産材の流通は複雑です(図2)。このため、山側は需要の予測がつかず、在庫を抱えるリスクがあるため、時間がかかる木材乾燥を適切に行うのが難しくなっています。さらにハウスメーカーや工務店側にとっては、ほしいときにほしい品質の木材を必要量手に入れづらい。そこで品質が安定し、大量に揃えやすい輸入材や集成材が重宝されます。
今回、新たにつくった仕組みでは、流通の中間を大幅に省略。経費を削減すると共に、それぞれが合理的に長期的な計画が立てられるようになりました。
伊佐ホームズは1年前に必要な木材量を山側に伝え、適切な対価を保証します。これにより、林業家は計画的に立木の伐採ができます。さらに利益を得ることによって健全な森を維持することができます。
製材所は時間的なゆとりを持って、効率的に丸太の製材・乾燥ができます。プレカット工場は特命で受注ができ、継続的に仕事が確保できます。一方、伊佐ホームズは高品質で履歴やグレードが明確な構造材をお客様に提供できます。もちろん、お客様に提供する木材の最終価格はこれまでと変わりません。
お客様には、生産者の顔を見える高品質な材を家づくりに活用いただくことで、環境負荷の低減、森林再生の一翼を担っていただくことになります。
「田園都市の家」森を育てる家づくり
森林再生を実現するサプライチェーンと美しい木質住宅『田園都市の家』構想
森を育てる家づくり『田園都市の家』と『森林再生プラットフォーム』